前向きに治療をしようとしている父だけど、体力が落ちて感染症になって抗がん剤治療が1クールしかできなかった。
体調が落ち着いて少し良くなってきたように見えたし、仕事に復帰しようと準備していた時に悪化して入院。
それからだね。
癌が広がって食べ物の通り道をふさいでしまうからと、食事がストップになったのは。
点滴だけの毎日。
声に張りがなくなってしまった。
弱音を吐くのが嫌いだから、痛いとも辛いとも言わないけど、目が怒っている。話し方もきつくなった。
優しい言葉をかけたくても、いつもイライラしているし、近寄れない雰囲気になった。
ベッドの足元で見守るのが精いっぱい。ごめんなさい。
先生に聞けないことは私が聞いてあげる
「何で治療法がないのに検査ばっかりするのですか?」
「何も食べてないけど、胃が燃えるように痛いって言ってます」
「手術した時、思ったよりも癌が広がって切除できなかったと言われたけど、本当に切除できると思って手術したのですか?」
先生の答えは、
「検査はがんの進行を知るために必要」
「何も言わないから気づかなかった。我慢強い人です。」
「手術前は切除できると思って手術をした。開腹しないとわからないところまで広がっていて残念だった」
悔しいね。父が悔しい思いをしているのは目を見ると伝わってくる。
父は優しいから、私にイライラをぶつけないように我慢してくれている。でも、兄には強く当たっている。
お兄ちゃんは文句言わずに協力してくれているよ。
「情けない姿を見に来たのか」
お父さん、そんなこと言わないで。お兄ちゃんはそんな風にお父さんのことは見てないから。退院したらまた元気になると思っているよ。
昔から胃腸が弱かったね。弱い部分に癌はやってくるのかな。
調子が悪いのに仕事に行って、帰ってきてから念のために病院へ行ったら、大きな病院へ回されてそのまま入院。
将来の計画が狂ったね。
3人目の孫が生まれてまだ1年しかたってないよ。もっとそばにいてたくさん愛してほしい。
父の前で食事をするのは気が引ける。
自宅に戻ってきたのはうれしいけど、父のベッドから食事をしているのが見えるし、調理の音やにおいが届いてしまう。
子供たちがワイワイしていると、「元気をもらえる」と喜んでくれてほっとした。
お父さんは辛いのはもちろん、家族な辛いことも知ってね。
父が確実に死に向かっているのを感じる毎日が不安でたまらないよ。
お母さんは倒れないでね。みんなそばにいるからね。